設営92日目
ツーリングというのは、雪や凍結が無ければ、気合があれば行けるものである。
これに対して“見たい景色”というのは、天気や季節、時間帯、そして偶然のタイミングなど、様々な条件によって、見る事ができる場合もあれば、見る事ができない場合もあるというのが現実だ。このため、運が悪い場合には、何度同じ場所を訪れても決して見る事のできない景色というものも存在するのである・・・
リクエストと確率
ツーリングの数日前、
「冠雪した富士山を見に行きたい!」
「ほうとうを食べたい!」
というリクエストがあった。
11月から1月にかけては、比較的富士山の全体を見る事ができる日数が多くなる時期ではある。しかし、それでも富士山全体を見る事ができる確率というのは、通年で32%ほどの確立なのである(2019年調べ)。
さらに、富士山が冠雪している時期というのは、10月から6月くらいまでで、6月や10月は、場合によっては“冠雪”と言えないほどの雪化粧の場合もある。そうしてみると、“程よい冠雪の富士山”の全体像を見る事ができる確率というのは、僅か19%程となってしまう。
ひと月を30日として換算すると、僅か4日間でしかない。
このため、リクエストに対しては、
「晴れていても富士山は、山頂付近に雲がかかる事も多いから、イメージ通りのものが見られるとは限らないよ。」
という念を押した上で、ルートと撮影スポットを検討し、東京-山梨のオール下道ツーリングを決行する事になった。
ちなみに今回の同行者は、バイクに乗り出して2か月程度の超初心者である。
冷え込みは吉報の兆しとなるか?
前日までの天気予報では、雨の確立は低かったのだが、ずっと曇りマークが付いていたため、多少なりとも富士山の頂上が顔を出してくれれば良いなぁと思っていた。ところが・・・
迎えたツーリング当日は秋晴れの超快晴!
雲一つ無い空は放射冷却が激しく、かなりの冷え込みを覚えるほどであった。
これは・・・期待できるかもしれない。
運転しながらでも話せるようにと繋いだインカムで、そんな話をしながら小一時間、朝の冷え込みがピークを迎える7時頃、津久井湖近くのコンビニの駐車場にバイクを停めた。小腹を満たしつつ、暖かい飲み物を補給することで、寒さで固まった体と初めての200km超のツーリングで緊張している同行者の気持ちをほぐすためだ。
「ここからは、また少し冷えるけど、あと1時間もするとだんだん暖かくなるはず。」
「今日は湿度も低いし、良い富士山が観られるかもしれないね。」
などと話しつつ小休止を取った後、国道413号線、通称“どうし道”へと向かった。
ヤエー回収率向上の秘策
この“どうし道は信号が殆ど無く、適度なワインディングが続く道である。このため、渋滞の少ない早い時間帯や夕方以降の時間帯は、とても気持ちよく走れる道なのだ。しかしながら初心者の同行者にとっては、ひたすら続くワインディングは、怖さと緊張で運転操作がおぼつかなくなるといった負のスパイラルを招く要素でもある。
このため、コーナーごとに気を付ける点などを説明しつつ、ツーリングの楽しみである“ヤエー(すれ違うバイク同士で手を振り合ったりする事)”のやり方や、“ヤエー回収率(相手が手を振り返してくれる確率)”を上げる方法などを解説し、走りながらそれを実証するという事をやって見せた。
ちなみにヤエー回収率を上げる秘策というのは意外と単純で、
・十分に手前から手を振る
→近くに来てから手を振ったのでは、反応できない人もいるので、反応できるようにする
・オーバーアクションで大きく手を振る
→サッと手を挙げた程度では、手を振ったのか気づかない場合も多いので、アナタに手を振ってますよ~をアピールする
・そして楽しそうに
→楽しそうに手を振って走っていると、仕方ねぇなぁと思いながら振り返してくれる人も多い
これを実践しただけで、この日の“どうし道”では約95%のヤエー回収率を実現した。ところで、今でこそ“ヤエー(YAEH!)”などと言っているが、昔はこうしたすれ違いざまに行われるライダー同士の挨拶を“ピースサイン”などと言っていたのである。
そんなヤエーの宝庫“どうし道”では、“道の駅どうし”で休憩を入れた。コンビニを出てからここまで約1時間だが、同行者が初心者の場合には、こめに休憩を入れる事を心がけた方が良いと考えたためだ。
“道の駅どうし”は、関東でも有数の“バイクが集まる道の駅”で、まだ道の駅が開いていない時間帯にもかかわらずその駐車場には、多くのバイクが停まっていた。こうした多くのバイクが集まっている光景も、バイクに乗り出して間もない同行者には、新鮮な風景なのであろう。なんだか表情を浮かべながら、自分の乗っているバイクと同じ車種を探していた。
期待が確率の壁を超えた瞬間、目の前に広がる富士
“道の駅どうし”を出た後は、山中湖の富士山撮影スポットの1つ、“平野浜”へ!
山中湖というと、県道729号沿いの無料駐車場での撮影が有名だが、ここでの撮影の場合、バイクと富士山を撮ろうとするとどうしても柵が入ってしまうのである。
それに対してここ、平野浜では、柵を入れずにバイクと富士山の写真を撮る事ができるというメリットがある。1点だけ注意すべき事があるとすれば、踏み固められているとは言え、足場が砂であるという事であろう。停車やサイドスタンドの接地状態に気を付ける事は予め伝えておくと共に、必要に応じてバイクの移動や停車時のアシストをしてあげると、楽しいツーリングに悲しい思い出を残さなくて済む事になるはずだ。もちろん、“立ちごけ”は、バイクに慣れてきても不意に起こり得る事ではあるし、“経験”の1つでもあるのだが、対策を取れる事をすれば防げる事があるというのは、“事故”を防ぐことと同じであろう。
バイクを停めたら、撮影を待っていてくれた富士山とバイクをひとしきり撮影し、平野浜を後にする。
「初ツーリングでこれだけ良い富士山を見る事ができたって事は、ツーリングでの景色運があるのかもね!今後のツーリングでも良い景色が観られるんじゃないかな・・・」
などと話しながら次の目的地へと向かうのであった。
続く
コメント
うん、私が乗っていた頃は「ピースサイン」って言ってた(;^_^A
YEAH!がYAEH!になっちゃったんだね( ´艸`)
乗り始めて2ヶ月でこの景色を堪能できたって、持ってるね~♪
miyukittyさん
コメントありがとうございます。
やっぱりピースサインでしたよね。まぁ、昔は本当に、日本の指をピッとヘルメット脇に出す程度でしたからねぇ~( *´艸`)
そうそう、乗り始め、初富士山ツーリングでこの景色は、なかなか持ってますよね^^